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LGBTショーパブのショータイムで使用する衣装の制作

横浜市営地下鉄「関内駅」から徒歩5分ほどの雑居ビル。暗証番号付きのインターホンを押すと「はーい」という可愛らしい声と共にドアを開けてくれたのが、今回のインタビュー相手であるYさん(25)。

写真NGなのが残念なくらい若々しくて可愛いYさんのお仕事は、LGBTショーパブのショータイムで使用する衣装の制作。

画像を見てお分かりの通り、ニューハーフの胸が丸出しになる過激で派手なものからロマンティックなものまで幅広く手掛けている。

プライベートでも職場でもLGBTと深く関わり合いがあるYさんに、ストレートの立場から見るLGBTの世界を詳しく伺う。

 

まず初めにストレート、ノンケ、アライ(支援者)などの表現方法をどう感じますか?

「ただの流行り言葉じゃない?っていう感覚です。普通に会話する中で出てくる言葉だったり。

ノンケも昔は聞いたことなかったけど、最近はみんな使っていますよね。ですので表現方法としては気にはなっていません。

ただ、アライは今回初めて聞くし、流行らなそうだし、言いにくいし、誰もピンと来ない感じはします。「新井さん?誰それ?名字?」みたいなことがまず頭に浮かびますね(笑)

アライが支援者への呼び方だってことを知った今でもやっぱりピンとこないし、周りの人も知らなかった。LGBTの人達も知らない言葉を使うのって意味があるんでしょうかね?

仮に私が支援活動に携わったとしても、アライって呼ばれたくないなぁ…。長い言葉になったとしてもLGBTを理解して支援していますという方がいいですね。

もうちょっと他の表現だったらいいのかなぁとは正直思いますし抵抗があります(笑)支援はしているけどアライではない!みたいな(笑)

 

ストレートやノンケという表現方法はLGBTを特別視していると思いますか?

それは考えすぎというか。結局ストレートじゃない人っていうくくりが微妙ってことですよね?

でもそれっていうのは男女っていうくくりがあるのと同じだと思いますし、自分はストレートだけどあなたはストレートではありませんよという意味で使っているのではなく、単なるポジション分けで使っているだけなので、あまり過敏になるのもどうかなぁという感じですね。

学校で「総合」っていう授業があって、私たちの年代は、世の中には色んな人も色んな人種もいるけど、その人たちの個性を大事にしようね、みたいな「受け入れる」ことを教わってきているので、表現方法で差別意識が生まれるということはないですね。

元々あまり壁を感じていないのは、同世代みんなそんな感じだと思います。LGBへの考え方についても世代の違いはかなり感じます。

 

周りにLGBTに対する差別者はいますか?いるとしたら具体的にはどのようなものですか?

それこそさっきの話じゃないですけど、世代で全然違うなぁと思ったことがあって。

差別というところまではいかないにしても偏見を持っているなぁというのは親に一番感じますね。親は50代なんですけど。

まず、この仕事を始めたときに「仕事場はショーパブなんだよ」って言ったら、親戚が集まったときに普段だったら「うちの子はこれこれこういう事をやっててね」と自慢混じりに話す母親が、この事についてだけは「衣装の仕事をやってるんだよ」でパタッと終わって、私に対しても色々細かく聞いてくる人なのに仕事に関しては全然聞いてこないです(笑)

それで抵抗あるんだなってことがわかりました。

今って、テレビとかでもおかまのお姉さんとかニューハーフとか、有名どころではマツコ・デラックスさんとか出ていますけど、「最近はどのチャンネルにもこういう人たちが出てるのね」とか言ったり、何かの偏見があるのはひしひしと感じますね。

そういう意味では親とのギャップはすごく感じます。自分には普通の事を普通に話すことが出来ないのは身内だけにちょっとショックですけど、わかって欲しいとは思いません。

 

それは分からないだろうと思うからでしょうか?

そうですね、人の考えって変えられるものじゃないし話して暗くなるのも嫌なので。でも寂しくはなくてもショックというのはありますね。

働いている場所や姿を見たら変わってくれるんじゃないかな?という期待も少しはありますけど…

 

もっと引かれる可能性もある?

かなりあります。知ってから引かれるのは今よりショックなので…少しの理解がある現状で妥協しているという感じです。当たらず触らずみたいな。

嫌いになられるよりはモヤモヤされている方がいいのかなって思うところもあります。

 

LGBTの友人が第三者から偏見を持たれているのがあからさまに分かった時、どう対処しますか?

もしも、その子が目の前で傷ついていたとしても下手に慰めたりはしませんし、あからさまな態度をとってくる方がいたら場所か話題を変えるの二択ですね。

結局、私達には絶対にわからないと思うんですよ。理解出来ると思っちゃいけないというか。

下手な言葉をかけて分かった振りをするよりは話題や場所を変えて触れないようにしますね。

差別主義の人には「そういう考えも仕方ない」と思っているので受け流します。

本当に色んな人がいて色んな考え方があるので、それを無理矢理にねじ曲げたいとは思いません。理解出来ないものは理解出来ないだろうなという考えが基本的にあるので。

わざわざ反論もしないし、声をあげて立ち上がろうという気もないですね。広い視野を持てない小さい人だなぁと若干思う程度です(笑)

 

偏見を持つ人たちをどう思っていますか?

いい悪いではなく、メディアやショーパブでしかLGBTを知らない人達から見れば、ニューハーフはおっぱいを普通に出すものだと思っていたり、その反面でドキュメンタリー番組では必ずと言っていいほど「LGBTの苦悩」みたいな暗い内容ばかりにスポットを当てていたり、一般人の知り得るLGBTの情報が極端だと思うんですよ。

おっぱいなんて絶対に出したくないニューハーフだっているだろうし、明るく普通に生活しているLGBTもたくさんいるのになぁと思うので、発信サイドが偏っていると偏見に繋がる部分はあるとは思いますね。

普段はあまり考えませんけれど(笑)偏見を持つ側にも持たせる側にも原因はありますよね。なんとなくしか分かっていないものを好きか嫌いで言うしかないのかなぁとも感じますね。

普通の事をメディアで取り上げてもつまらなくなるとは思うので、仕方ないのかなという部分も否めませんけれど。ただ、アピールする部分は偏りすぎです(笑)

 

友人や知人にLGBTはいますか?カミングアウトされたときどう思いましたか?

中学の時の同級生がニューハーフになりました。高校時代は接点が無くなって3年くらい会っていなかったんですけど、SNSを見た時に「あれっ?ギャルになってる!」ってなって(笑)

突然変わっていましたからびっくりはしましたけど、すごい似合っていて可愛かったです。名前も女の子の名前に変わっていましたけど、特に違和感もなく(笑)

その時はなんとなく「そうなのかな?」って感じでしたけど、同窓会で会った時にちゃんと知りました。

 

ニューハーフになっていた友人を同窓会で初めて知った周りの方の反応はどうでしたか?

全員が「キャー!可愛い!どうしたのー?」みたいな感じでしたよ。引いてる子はいませんでした。

私はその子と仲が良かったんですけど、引く人がいないという状況に私の方が驚いたくらいです(笑)

男の子も女の子もみんなそういう反応で(笑)その子も普通に「私おかまになったの」とカミングアウトしてましたね。

 

LGBTに対して、興味本位で聞いてはいけないのではないかと思う事は何でしょうか?

「女なの?男なの?どっちなの?」みたいな事は聞いてはいけないと思いますね。本人には心の問題であるので、本人が女だと言えば女だし、男だと言えば男なんだと思うんです。

おっぱいがあっても男だと言えば男なので医学的にどっちなの?ってツッコんで聞くのは良くないと思います。

私達は努力をしなかろうが、だらしなかろうが、女だという事実は変わらないので「女らしくない」と言われようが女なんですよね。

私達よりもよっぽど心も仕草も女らしいニューハーフが子宮が付いていないという理由だけで「女じゃないじゃん」と言われる事は、とても悲しい事だと思います。

もちろん笑って流す強い方もたくさんいますが、人それぞれセーフラインも違うし、デリケートな問題なので心を尊重することは大切なことだと思いますね。

「女だって言ったって元男じゃん!」は、最も言ってはいけないんじゃないでしょうか。何故なら答え合わせの仕様がないからです。向こうが女だと思っていても、こちらが男だと思っていては解決しませんから。

あとは、結婚の事と子供の事ですかね。向こうが話して来るまで聞かない方がいいのかなとは思いますね。日本も少しずつは変わってきてはいますけど、まだまだって感じはしますので。

 

逆に、興味があるなら聞いてもいいのではないかと思う事はありますか?

性転換手術については聞いてもいいのかなと思いますね。すごく嬉しそうに話してくれるんですよ。もしかしたらショーパブ限定なのかもしれませんけど(笑)

とにかくみんな嬉しそうで詳しく話してきてくれます。時々、写真まで見せてくれたり(笑)

セックスの内容については、一般の方でLGBTをあまり知らない方達には気になるところだとは思いますし、私だって気にはなりますけれど(笑)、友達にでも聞ける範囲の内容に留めておいた方がいいのではないのでしょうか。

「どうやってやってるの?」とか「気持ちいいの?」なんて普通聞かないですよね(笑)

そのLGBTの方とどこで出会ったか、どうやって知り合ったのかを考えたら、この事以外でも聞いていい事か聞けない事かは意外と簡単にわかるんじゃないでしょうか。

 

具体的に何か支援活動をしていますか?している理由、していない理由を教えてください

さっきも言いましたけど、支援活動はしていないし、するつもりもありません。

理由は二つあって、一つ目は人の考え方を変えるつもりはないということ。二つ目は自分と同世代の人達は、様々な生き方をしている方達への許容範囲が元々広いので、その人達が大人になっていくにつれて、段々と誰をも受け入れる世界に自然になっていくんじゃないかなという想いがあること。

日本がLGBTに対してもっと寛容になって、どの性別の人も似たような生活を送っているんじゃないかなという姿を感じるので。安心感はあります。

LGBTプライドパレードの様子

(LGBTプライドパレードの様子  ウィキペディアより引用)

では、例えばもし、LGBTを排除する流れになったとしたらどうしますか?

それは!そうなっちゃったら活動はし始めるとは思いますね。

今の流れだからこそ何もやらないっていうのもあるし、友達にLGBTがいなかったら例えそうなっても活動はしないとは思うんですけど、友達にもいて、仕事としてもこういうお仕事はなくなってはいけないと思うので、活動するかもしれません。

 

口だけで理解があるような事をいう人と、本当に理解をしている人との違いは何だと思いますか?

うーん…、結局私も、口だけで理解があるような事をいう人の一部だとは思います。

真の理解者というのは、LGBTの本人達だけなんじゃないかと思うんです。友達同士でもいくら仲が良くても全ての本心を分かるわけではないと思うし、抱えているものが違うと思うので。

ただ少しだけ思うのは、理解者というのは、その人が男であれ女であれ一人の人間として接する人なんじゃないかと思いますね。【LGBTの】その人ではなくて、一人の人間であるその人に接することが出来る人です。

口だけで理解がある人っていうのは、お前はニューハーフだから、ゲイだから、ってどこかで思っていそうですね。

あとは、そういう人達は認めるけど、身内にはいてほしくない!とかね(笑)

元々男と女にも壁があるのだから、LGBTにも壁があるのは当たり前だし、全部わかる訳ないじゃん!って思うのが案外本当の理解者なのかもしれませんよね。

-取材終了―

 

まとめ~取材を終えて~

取材日の1週間ほど前に「こんなことを聞くと思いますのでよろしくお願いします」と、Yさんには大まかな取材内容を書いた紙を渡していた。

当日、テーブルに出されたその紙に細かい文字がびっしりと書き込まれていた事を、この先も忘れる事はないだろうと思う。

Yさんが今回の取材に一生懸命に取り組んでくれたことは私に伝わり、私はYさんがそういう気持ちで話してくれた内容を読者に伝えたく一生懸命である。

どちらも他人の考え方を変えようとはしていないが、自分の気持ちに変化があったのは間違いない。

「変えよう」としても変わらない事が「くみ取る」だけで変わることもある。

彼女と同世代の子達が年を重ねていくと、どんなLGBT事情になっているのか見てみたいものである。ある意味「総合」の授業は団塊の世代にこそ必要なのかもしれない。