LINEで送る
Pocket

LGBTショーパブの写真

おなべとニューハーフが混在するショーパブ「DREAMS」。横浜市関内駅から徒歩5分、現在はホットペッパーやぐるなびにも載り、観光バー化しているほどの有名店になったこのお店を経営するのは、おなべのT氏(45)。

客席が4つしかない小さな小さな店からスタートし、今ではショーパブ2店舗、MIXバー、衣装会社の経営など多岐に渡る仕事をされているT氏に、LGBTであり経営者でもある立ち位置からのお話を詳しく伺う。

 

経営者になった動機と道のりを教えてください

私はLGBTでいわゆる「おなべ」なんですけれど、おなべがショーパブを経営するということ自体が今の日本では非常に珍しいんです。

私自身すごくショーが好きで、ショーの制作や構想に合わせて衣装も作るところまで、とにかく好きでやっているという感じです。

元々は19歳から26歳位まで新宿のおなべのお店で働いていて、その後、そこを辞めて「何しようかな」と思っている時に、後輩に「ちょっとショーをやるから手伝ってくれないか」と誘われたのがきっかけです。

新宿にいた頃は有名なホストクラブの系列店で、いわゆる「おなべホスト」といわれるおなべだけのお店だったので、そこで初めてゲイやおかま、ドラッグクイーンの方々と仕事をするようになりました。

お店は総勢12~3名くらいで、そこで裏方をやっている内に「これは面白いな」と思うようになりまして。そうしたら1年半くらい経ったある日そのお店が突然潰れてしまい、働く所もないし給料も未払いだったので皆で「どうしようどうしよう」とやっている間に、横浜でパブを経営されているお客様から「横浜面白いから来ないか?」という話を貰いまして。

そこで、「誰が詳しい話を聞きに行くんだ」という話になったんですが、みんな消極的で(笑)

「俺が話聞いてくるよ」という事になり、初めて横浜に来ました。

その方の店は早い時間が女の子のお店なんで、そのあとの時間を間借りするような形から始めて。そこからですね、色んな人に助けて頂きながらお店をオープンして今19年目です。

当時はゲイやおなべがミックスしたお店はなかったんですよ。おかまさん、ニューハーフさんだけの、ショーをやる有名な老舗はありましたけど、男役女役が入り乱れる新しいショースタイルを始めたのはうちが初めてなんじゃないでしょうか。

20年近く経っても「ちゃんとしたショーが出来ているのか」と聞かれたらそれはわからないし、何が成功で失敗だったのかもよくわからないんですけど、色々なトラブルがありながらも5年ごとくらいに店舗が増えていったという感じです。

衣装に関しては、初めは大きな会社に頼んでいましたが、頭で描いているものが実現するという事にはなかなかならないし、とにかく高い!(笑)ショーの大道具、小道具というのはべらぼうに高いんです。杖を一つ作って50万とか(笑)。

それを、自分達でやったらどうなんだろうと思って。電気工事や照明を作るのも自分達でやったり、ベニヤ板を買ってきて舞台を作ったり。そんな風にしながら少しずつ形にしていきました。

お店は10数名から始まり、今では40人位の規模になりましたけれど、儲かっているかと聞かれたらそうでもありません(笑)こっちのお店が良かったらこっちのお店がダメだったとか色々ありますよ。

横浜では初めてのLGBTのミックスのお店に対して、反応はどうでしたか?

初めは「なんだお前ら!」という反応がほとんどでしたね。おかまさんは周知されていたけれど特におなべは物珍しいみたいで。

都内にいる時は全然気づかず、自然に受け入れられていた部分が強かったので、突然「なんなんだ気持ち悪い」というような状況が続いてへこんだりもしました。

おなべってメジャーじゃないので(笑)。

テレビでもよくあったじゃじゃないですか、おかま50人とかがひな壇に座ってトークを繰り広げる番組とか。あぁいった場面でもおかまさんやゲイとかは面白がられるんだけど、おなべが手術をしたとかいってテレビに出ると、教育委員会とか女性の権利を守る会とかからものっすごいクレームが来るんですよ。

突っ込んだ話をすると必ずクレームの嵐になるので制作サイドもおなべを取り上げることがなくなりました。視聴率自体はすごくいいからやりたいらしいんだけど出来ない現状なんですね。

今、色んなLGBTがこれだけテレビに出ている時代になってもまだおなべだけはNGなのは何故なんでしょうね。クレームがくる理由を今度調べてみて下さいよ(笑)

子宮を取ったりする事で、子供を持ちたくても持てない女性の気持ちをどう思うのかというクレームに関してはチラッと聞いたことがありますし、納得する部分もありますが。

今は、渋谷で「同性愛もオッケーですよ」とはなって、段々と暮らしやすくはなっているんでしょうけれど、おなべだけはまだまだという印象ですね。

そんなバッシングも多い中、横浜で続けてこられたのは何故ですか?

元々おかまさんには芸達者な方が多いので、それを面白がって来て下さる方も多くて、そこで色んなLGBTが席に座ってお酒を飲みながら会話をしたり、ショーがあったりで、混沌とした中で徐々に認識されていったという感じなんじゃないでしょうか。

今の時代はコンプライアンスを守りつつっていう流れなので、当時のようなしっちゃかめっちゃかなのは無理ですよね。

時代もあると思います。その中で我々も考えさせられるのは、例えばショーを創っていて昔はハリセンでお客さんを叩いたりしてイジったりしてましたけど、今の時代で同じ事をしたら訴えられますよね。

現実に訴えられた経営者も知っていますが、逆に我々に対しても酷い言葉で罵るような人はいなくなりましたよ。

昔はそりゃあひどかった(笑)泣かされた従業員もたくさんいましたしね。

当時は「お前ら気持ち悪い」だったのが今は「えー、こういう世界もあるんだねー」みたいな。お客さんも普通のサラリーマンや主婦の方が多いですよ、今は。

LGBTであることが仕事に影響することもあると思いますか?

LGBT同士が集まるのって「自分たちは同じ」だっていう安心感なんですよね。一人じゃないみたいな。

大企業にポンっと入ってもどうしても違いを感じてしまうし、感じるのはもう仕方のない事なんです。じゃあ違いを取っ払うので対等にやってみて下さいよーっていうのが、今の日本の流れだと私は思っています。

ただ、戸籍を変えようが性転換手術をしようが自分が変わらなければ何も変わりはしません。

ニューハーフさんは仕事に対してはめちゃめちゃ真摯な方が多いです。逆におなべはなにかあったときに逃げちゃう(笑)そこは本能なんでしょうかね(苦笑)

これは本当に個人的な意見なんですが、「元」の部分が影響しているのかなーと感じる事はあります。

ゲイの方にお話を伺った時も「そこはやっぱり男なんだよね」という言葉が出てきましたが、そういう本能みたいなところってあるのでしょうか?

ある。絶対にあります。

恋愛に関してはこうして区別されてはいますけれど、じゃあその他のところ、例えば仕事とか考え方とかで大きく分けたら「元」の部分はあると思いますよ。

仕事に対する姿勢で「ニューハーフさんカッコイイな!」って思う時もいっぱいありますから。「そこは男だよね!」って思われるのも言われるのも嬉しくはない微妙なラインでしょうから言ったことはないですけど(笑)すげーなとは多々思います。

他で働くLGBTさんたちも見てみたいですし他の経営者さんの意見も聞いてみたいところです。

経営者の立場であっても、仕事上でLGBTをカミングアウトするべき場面はあるのでしょうか?

私はサービス業に従事してしまっているので、カミングアウトがマイナスだなと思ったら言いません。

言う事で信頼関係が築けないとか、立場的にはすごく難しくて。

お客様にも私の事を男だと思っている方が結構いまして「社長さんは男なんだよね?」って思われている事でプラスの事もあるんですよ。

必ずしも全てにおいてそうだという事ではないんですが、そこで信頼関係を勝ち得られている部分は無きにしも非ずです。カミングアウトをすると、どこかで壁が出来てしまうのは否めないんです。

相手によりますし、相手によって分けているのが正直なところですかね。

LGBTが社会的に認められていく今の流れを肌で感じていますか?

私は自分が生きている内に戸籍が変えられるなんて思ってもいなかった。変えられないなら変えられないで「お前ら気持ち悪いな」って言われながら生きていったんだろうなと。

石を投げられる時代は実際にありました。

私としては、今はまだ小学生や中学生でこういう悩みを持っている未来の子たちにここを見てもらえて「こうやって生きていける、これでも大丈夫なんだ」と思ってくれる手助けが出来るのなら、少しは今まで何もしてこなかったことに対しての償いになるのかな、と思って今回の取材を受けているところもあります。

人目を気にせずに一人で何でも調べられるなんて昔はなかったですから、本当にいい時代になりました。

LGBTはどうやって生きているんだろうって思っていた時代が嘘みたいです。

若い子に相談されることもありますけど、今の時代は自分たちの時とは全然違いますから、自分が今ここで話している事も「こういう人もいるんだなぁ」と思う位でいいと思います。自分の事をガツガツなLGBTだとは思っていないのでお役に立てるかどうかはわかりませんが(笑)

一般企業にLGBTが自然に溶け込める日は来ると思いますか?

まだまだ。まだまだですよね。だってヤフーニュースにも載るくらいですよ?LGBTだということをカミングアウトしろと言われて提訴しただのいう事が。

一般企業で働いている方達にとって、組織の中でLGBTが他と対等だと思えるのはなかなかというか、まだまだ難しいんじゃないですかね。どちらも考えを押し付けてはいけないので本当にこればっかりはねー。

すごく分かりやすく言えば昔の白人と黒人の人種間に似ている所もあって。

「同じ人間だろ?」、「そうだよ、だから我々もそうやって接しているじゃないか!」みたいなやり取りがあっても、黒人さんの中にはそう思えていない方もいて、それとちょっと近いです。

いくら普通の人がそう言ってくれても100%信じられない。それは自分の負い目なのかなんなのかはわかりませんし、周りが応援してくれているのに自分達もこんなんじゃいけないなという気持ちもあるんですよ。

でもそれは例えば付き合っていた子に振られたのを全員が全員「あ、自分がおなべだからだな」って思ってしまうのと同じなんですよ。本当は全く違う理由かもしれないのに(笑)

向こうがどんなにおなべが理由じゃないといっても、心のどこかで「いや、絶対そうだ」って思ってしまう頑なな部分はみんなありますね。小さい時からのコンプレックスですから。

うちは4人姉妹で、親が「なんで男が産まれないんだ!」ってなってる時に「俺、実は男でーす」って言えて、みんな両手を挙げて喜んでくれたから恵まれている方だとは思いますけど、そんな自分でもやっぱり負い目もコンプレックスもありますからね。

ましてや「やっと長男ができた」なんて喜んでいる親に「実はおかまです」なんて言えませんよね、言いたくても。

なのでカミングアウトするべき、カミングアウトが出来る社会に!なんて言ってても個人個人が自分にとってプラスになるかどうなのかは考えて当然ですし、皆が皆、社会に自然に溶け込む事は難しいと思いはします。

チャリティーをされたそうですが、どのような動機からでしょうか?

子供が出来ないからね、みんな。

LGBTのお店の方が集まって3部作のお芝居をやったんですよ。何百万かになったお金をユニセフに寄付しました。あとは熊本にだとか。

感覚は一般の方と同じなんですけれど。チャリティーをしている理由は少なからず自分は恵まれていると思っているからです。

あと、LGBTだけでお芝居をしたりするのは注目度が集まるからです。我々が動けば注目度が集まるのはある程度は自負しています。希少人種ですから(笑)

おおまかに分けたら男ですけど、じゃあ普通の男と全く一緒かといったらそうじゃないですから。そこを認められる人と認められない人で生き方の差は勿論出ます。

どんな生き方も個人の自由ですよね。自分が何者なんだろうという事は全ての人が持つ共通点でもあると思いますかこだわるのは普通なのかな。

ただ、私はそこを一番大事にしては生きていないです。ルーツや性癖や男なのか女なのかは自分にとっては大した問題じゃない。

だから客観的に自分たちを見る事が出来るんですかね。

我々が集まればそれなりに影響力もあるし集客もできると思いチャリティーをしているところは大きいです。勿論、結果も出しています。

ミュージシャンと一緒ですね、感覚は。自分たちが動けば周りも動いてくれるんじゃないだろうかという考えはありますよ。

LGBTショーパブ02

(2007年に行われたチャリティー公演のチラシ。画像はグーグルからの引用)

経営者の立場から見る日本のLGBT事情と未来への期待を教えて下さい。

今は、期待と挫折が入り混じっています。

性転換手術一つをとっても、埼玉医大で出来たのが今は出来なくなってしまった。戸籍を変えるには性転換手術をしなくてはならない、でも日本では出来ない、みたいな矛盾点もありますし。

20年前に比べたらLGBTに対する認知度は断トツに違いますけれど。ただ、頭でっかちになっている部分もあると思います。

ネットやメディアでしかLGBTを知らない方達も多いと思いますし。人はやはり直接関わらないとわからないものですので、文字や言葉だけで「認められている時代だ」なんて納得しちゃうと挫折も大きいだろうなと危惧するところはあります。

なのでLGBTの方にはどんどん外に出ていって欲しい。金八先生で上戸彩がやった役の様な悲しいばかりの世界でもないし、映画にあるような酷いばかりの世界でもない。

メディアの寄りは極端だと思っておいた方がいい。そう作る方が衝撃があるからです。

私が一番言われて嫌なのは「可哀想」という言葉。「何が?」と思いますよ。

ただね、そういう気持ちや言葉をシャットアウトしちゃうのは簡単なんです。そんなことは上げたらキリがない。一緒にいればわかるとか、話し合えばわかるとかいう問題でもない。

そこで一番大事になってくるのは、LGBTだから、男だから女だからとかじゃないし、未来の若い子たちにはそこにあまり固執して欲しくない。

生きづらい世の中かもしれないけれど、「認めよう」という流れにはなっているし、何かを判断されるには個人の性格や人間性の方が大きかったりするので「LGBTだからダメなんだ」とかいうような考えで閉じこもるのは勿体ない。

私はよくタイに行くんですが、タイってすごい国で性別ヒエラルキーの頂点に立っているのが女性なんですよ。

女性>おかま>男性なんです(笑)

で、仕事のヒエラルキーの頂点はおかまなんです。

銀行が、女性、男性、おかまの誰にお金を貸すかっていったらおかまなんですよ。日本じゃ絶対に考えられないですよね。

おかまは仕事ができるんです。男の仕事に対する真摯な考え方に合わさり女性の細やかな気配りもできる。

本当にどこに行ってもおかまが堂々と働いています。

日本もそうなれると思いますか?

絶対にならないと思います。それは少なからず男性が一生懸命に働こうとしているから。

男尊女卑はやはり昔からの伝統だし、いくら男女対等だとはいえ根強く残っているのも事実ですしね。欧米に比べても全然ですし。

タイで男尊女卑があり得ないのは男性が働かないからです。

「俺は男だから頑張るぞ」っていう日本男性の気持ちを飛び越えて欧米やタイのようになるのは無理かなと思います。

ストレートやアライ(支援者)には何を求めますか?また、何をして欲しくないですか?

興味を持ってもらいたい。「え、なんで男なのにオネエ言葉つかってるの?」の様な些細な事からでいいので。

今の若いLGBTは特に「私はおかまじゃなくて女だから!」とかこだわっている方が多いので「そうだよね」って同意してあげるのも優しさなのかなって思います。

みんな頑張って生きているので「頑張れよ」って思ってくれると嬉しいです。

これは病気ではないんですけど「性同一性障害」って病名がついたことで、自分もスッキリした部分もありますし、我々がこうなったのを自分のせいにしてしまっている親が救われた例もたくさんあると思います。

自分も小さい頃は自分が悪いのかなと思っていたし、男の人をジーッと見ていたら好きになれるのかなと悩みもしました。女の人を好きになる自分がおかしいのかなと思いながら、高校生時代まで生きてきているので、病名がついて納得ができたことは確かです。

ただ、「病気なのね、可哀想ね」だけは本当にやめてもらいたいかな。興味を持って純粋に友達になってあげてほしい。可哀想だからじゃなく。

LGBTの一番ダメなパターンは孤立です。孤立して、自分の事は誰もわかってくれない、仲間もいないと思うと誰だって病みますよ。

私がこういう仕事を経営している最大の理由は「みんないるから、みんなで頑張って生きていこうよ!」に集約されています。

中には放って置いて欲しい方もいるでしょうけれど、その辺はLGBT、男女関係なく普通の事だと思うんで、普通の方と普通に知り合って友達になるような感覚で、気負わず声をかけてあげて欲しいかなと感じますね。

合わない人とは合わないのはどこの世界でも同じですし(笑)考え過ぎないで平気です!

―取材終了―

 

まとめ~取材を終えて~

T氏は20年前からの私の友人でもある。

この度、私がLGBTに関する記事を書く事になり5年振りに連絡すると「お前がやることなら何でも協力するよ!」と、多忙な身にもかかわらず二つ返事で取材を快諾してくれた。

そんな彼の気持ちに心を打たれて、20年間自分の内側にあった正直な気持ちを初めて打ち明けてみた。

「私にはTの気持ちを本当の意味では理解できないのだろうから、友達だと思っていてくれている自信はなかった。」と。

T氏は「ばっかじゃねーの?友達だからお前は今ここにいるんでしょ!」と笑い飛ばした。

考え過ぎていらない壁を作り出していたのは私自身。本当に「考え過ぎないで平気」なのだと感じた。