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想像してみてください。

仲の良い ”女友達” に、「実は、男なんだ」といきなり言われたら…。

想像してみてください。

「実は、男なんだ」という言葉をあなたに伝えるために、その友達が、どれだけ勇気を振り絞って、覚悟を決めているかということを。

前回は、FTMとして生きる〜セクシャリティ編〜と題し、LGBTの入門、FTMの概要などについて書きましたが、今回は「FTMのカミングアウト」について書いていきたいと思います。

LGBT、セクシャルマイノリティは、もはやめずらしい存在ではありません。

あなたの周りにもいるかも知れない。

当たり前の世の中が来るかもしれない。

はたまた、あなたの大切な人が当事者かもしれない。

この記事を読んで、少しでも当事者のこと、気持ちを知っていただけると嬉しいです。

 

カミングアウトとアウティング

カミングアウト

カミングアウト(Coming out)とは、これまで公にしていなかった自らの出生や病状、性的指向等を表明すること。英語の動詞形でカムアウト(Come out)とも言う。

ゲイ、レズビアン、いわゆる同性愛者と言われる人々は、家族や親友や職場や社会から同性愛者であることを隠すには、異性愛者として振る舞う必要があり、日常生活で常に偽りの自分を演じなければならない状態にあった。

この「真の自分を押し込め、暗く抑圧された窮屈な状態」のことをアメリカの同性愛者の間では「押入れ(クローゼット)の中にいると暗喩されていた。

そこから、「(真の自分を押し込んでいた)クローゼットの中から出て真の姿を開放する」という意味でクローゼットから「カミングアウト」という用語がアメリカのゲイ社会で生まれた。(Wikipedia参照)

インターネットで「カミングアウト」という言葉を検索すると、「人に知られたくないことを告白すること」の他、「同性愛者であることを告白すること」「性同一性障害であることを告白すること」と表記されており、主にセクシャルマイノリティを中心に使用されている言葉ということがわかります。

アウティング

反対に、アウティング (Outing)は、ゲイやレズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー(LGBT)などに対して、本人の了解を得ずに、公にしていない性的指向や性自認等の秘密を暴露する行動のこと。(Wikipedia参照)

LGBTが世の中に広がっていくに比例して、こういったアウティングによる問題も大きくなってきています。

最近、大きな問題となっていたのが、2015年9月に発生した、一橋大学転落事件。

一橋大学に通う当時25歳のA君は、学校の同級生であり、とても仲の良かったB君に好意を抱き、ゲイである事と同時に告白。結果、恋は実らなかったものの、友達のままでいようという事になったが、ある日その事件は起こりました。

A君B君を含めた同級生10名がいるLINEグループに、B君が「もうお前がゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめんA」とメッセージを投稿。

A君の許可なしにA君のセクシャリティが皆に知られてしまいました。つまりA君はB君によってアウティングされてしまったのです。

これにショックを受けたA君は、B君と顔を合わすとパニック発作が起こるなどの心身の不調が現れ、心療内科や、学校の相談室等を利用しましたが、いい結果とはならず、その後、建物の6階のベランダを乗り越え、転落。搬送先の病院で死亡が確認された、という大変悲しい事件が起こってしまいました。

LGBT当事者が、全員カミングアウトしたいかというとそうではなく、一生隠して生きていく人だってもちろんいますし、カミングアウトをするにせよ、その人のタイミングというものがあるので、必ずしもLGBTが広がっていくことが素晴らしいことだと言えない事件の一つでもありました。

アウティングによって一つの命が亡くなってしまったことの恐ろしさは、知っておくべきですね。

 

若林佑麻のカミングアウト

友人へのカミングアウト

「あんな、実は、自分は、心と体の性別が違うねん」

夜中の12時を回っていました。当時東京に住んでいた親友が大阪に帰ってきていたので、今しかないと思い、バイト終わりに原チャに乗って親友の家へ向かいました。

生まれて初めて、親友にカミングアウトした時、緊張と不安で心も体も震えていたことを今でもはっきり覚えています。

「え・・・」

親友から最初に返ってきた言葉でした。

やっぱり受け入れてもらえへんよな~。嫌われたよな~。

と思った瞬間でした。

「どうでもいいねんけど」

「あんたが男やろうが女やろうが、あんたは、あんたなんやろ?それやったら、ええやん」

これが僕の、初めてのカミングアウトです。

相手は、中学からの同級生、そう、女子校の時代からの親友です(笑)

“女の子”だと思って過ごしてきた友達がいきなり“自分は男だ”と言い出したら、どう思うのだろう。

僕は親友の事がすごく大切で、これからも仲良くしていきたいのに、嫌われてしまったら、気持ち悪いと思われたら、と不安しかありませんでした。

親友がどう返答してくるのかなんて、検討もつきませんでした(笑)

だからこそ、「どうでもいい」と言われた時は、なんていうか…本当に嬉しかったんです。

「どうでもいい」って一見ネガティブな言葉ですし。それに今思うと、絶対どうでもいいなんて思ってなかったと思うんですよ!!

だって、女の子だと思っていた親友が、男だと言い出し、性転換するなんて言い出したら、やっぱり心配になると思うんですよ。

でも、それを「どうでもいい」という言葉で片付けてくれたのが、親友なりの愛だったのだと思います。

今の僕があるのは間違いなく、彼女のこの言葉のおかげです。

話をさかのぼりますと、僕がカミングアウトするきっかけとなったのは、バイト先の先輩に同じFTMの人がいたからです。僕にとっては、初めて出逢うFTMでした。

僕は彼にあった瞬間、“自分もこの人と同じだ”と確信したのです。

彼に色々話を聞いたり相談に乗ってもらい、周りにカミングアウトすることを決めました。

ただ、仲が良ければ良いほど、言いにくいんですよ、これが。

しかし、ありのままで生きると決めた僕は、バイト先で一番仲の良い女友達を呼び出し、勇気を出してカミングアウトしました。

彼女から返ってきた言葉は、

「知ってる」

え?!何で知ってんの?!僕の頭ははてなマークでいっぱいでした。

「聞いた…」

え?!ええ?!?!

そう、FTMの先輩に先に言われていたのです。アウティングされていました。

僕はびっくりしたのと、自分で言いたかったという悔しさでいっぱいでしたが、彼女は、

「そんな大事なこと、ウチもあんたの口から聞きたかった。だから悔しいけど、でもあんたの口から聞けてよかった、ありがとう。これからもよろしく」と。

それから僕はたくさんの友人にカミングアウトしましたが、誰一人嫌な顔をする人、差別する人、離れていく人はいませんでした。

もちろん、僕みたいな当事者ばかりではありません。いじめられたり、苦しんだり傷ついた人だってたくさんいます。だからこそ、僕は友人の有り難さをより実感します。

カミングアウトする前と後では、彼女たちとの付き合い方は変わっていません。昔は女友達で、今は男女の友達で、でも付き合い方は変わってないので、なんか変な感じですが、それがなんだか、とても居心地がよかったりもします。

もしあなたが、友人にFTMだとカミングアウトされたら・・・

「そうなんだ」って思ってください。

ストレートの方々から見ると普通じゃないかもしれないけれど、僕たちにとってはこれが普通、“ストレート”なんです。

「僕、朝は絶対パンなんです」って人に、「え?日本人なのに?!朝はご飯じゃなくてパンなの?!」なんて返す人いませんよね?

「そうなんだ〜」って思いませんか?

日本人だからって朝ご飯はご飯じゃなきゃいけないわけじゃない。日本人でも朝ご飯は絶対パンだって人もいるだろうし、どっちも食べる人もいるだろうし。

だから、男が男を好きでも、女が女を好きでも、身体が男で心が女だろうが、身体が女で心が男だろうが、「そうなんだ〜」って思ってくれることが、僕たち当事者にとっては一番有り難いことだと、僕は思います。

家族へのカミングアウト

僕の家族は、父、母、姉、そして僕です。ちなみに僕は、全員にカミングアウトしています。

間もなく19歳を迎えるという頃に、僕は家族全員にカミングアウトすることを決めました。母と姉には自分の口で言いました。

母からは「ええやん、普通やん」という言葉が返ってきました。僕の昔から大嫌いだった「普通」という言葉を、好きになった瞬間でした。

姉からは「そうなんや」しか言われなかったですが、後日僕の机の上に手紙が置いてありました。「気づいてあげられなくてごめん。あとそれと、小さい頃、お前なんか生まれてこんかったら良かったのにって言ってごめん」と、書いてありました。

僕と姉は昔からあまり仲のいい方ではありませんでしたが、これがきっかけで、今は家族らしくなっています。

誰に言う時が一番緊張したかというと、やはり父でした。

僕は昔から、父の持ってる物は全部欲しかったし、父がやってる事は全部やりたかった。

つまり、父のようになりたかった。憧れの男というんでしょうか。

だから必然的に僕の心の向かう先は、“男”だったのかもしれません。

だからか、父にだけは口では言えませんでした。

なんていうか、嫌われたらどうしようとか、軽蔑されたらとかではなくて、頭に浮かぶのは「ごめんなさい」という言葉でした。

別に悪い事をしている訳でも、犯罪を犯しているわけではないことはわかっているのですが、父が、家族が大好きだから、だから、皆の望むように生きられなくてごめんね、という感じだったのかもしれません。

父には手紙を書きました。父は離婚して離れて暮らしていたので、父の家の玄関に茶封筒に入れた手紙と二人の思い出の品を置きておきました。

そしたら父から、「あんな風に手紙置いてあるんから、死ぬんかと思って焦ったわ!笑 もう大人なんやし、あんたの好きなように生きなさい!」と。

そんな家族のおかげで、僕は今、自分らしい人生を楽しんでいます。

 

FTMに取材してみました

真弓 瞬のカミングアウト

⑴年齢 28歳

⑵職業  俳優/歌手、飲食店アルバイト

若林(以下、W):初めてカミングアウト(以下:カム)をしたのはいつ、誰にしましたか?

真弓(以下、M):ハッキリとしたカミングアウトは中学の時に姉に。

W:その時の事、心境を教えてください

M:気付かれているだろう、という気持ちがあった。 不登校の理由の一つだったので、その流れで話しました。

W:家族にはカムしていますか?

M:はい

W:している場合、カムした時の事、ご家族の反応を教えてください

M:姉2人は「気付いていたよ」という感じで。 母との場合は、長い時間泣きながら話しました。受け入れてもらうまで時間もかかりました。父の場合は手紙でだったので、反応らしい反応はもらっていません。

W:カムする前、した後では、何か変化はありましたか?(ご自身でも、ご家族でも)

M:彼女を彼女として紹介出来たのが嬉しかった。 ふざけて「長男です」と紹介されたりもする様になりました。

W:友人へはカムしていますか?

M: はい

W:友人へのカムで、嬉しかった事、悲しかった事をそれぞれ教えてください

M:変わらず友人を続けてくれている人たちには感謝しかない。 話のネタにされる事もあるけれど、まぁ、仕方ないと思います。

W:友人とはカム前、後で何か変化はありましたか?

M:素直に恋愛の話ができる様になりました。

W:仕事場では、カムしていますか?

M:はい

W:している場合、周りの反響、働きやすさはどうですか?

M;一度それを理由にクビにされたが、働かせてくれた職場(飲食)に関しては特に気にする事もなく楽しく働いています。

W:カムしてよかったこと、もしくは困った事はありますか?

M:洗いざらい話すことで、変な気を使わなくなるのでとても楽になった。嘘をつかなくていいことが一番よかった。困ったことは特にありません。

W:アウティングについてどう思いますか?

M:噂話はみんな好きだから、正直気にしていたら生きていけない。というか、きっと自分だって誰かの秘密を誰かに話してしまった経験もあるだろうと思うし。

「当人の気持ちを考えず暴露してしまうような人間」を選んで話してしまった自分の見る目がないだけだと思うことにしています。

W:友人にFTMだとカムされたとき、どうすればいいですか?

M:別にどうもしなくていいと思う。自分の経験上「変わらずに接してくれたこと」が一番嬉しかったので。

W:ご自身がFTMとして生きていてどうですか?

M:大変です。でも、食べ放題/飲み放題と同じで「大変な分、元を取らなきゃ」精神で生きてます。

W:ストレート、アライの方に向けて、メッセージがあればお願いします

M:変にかしこまらないでください。 腫れ物に触るようにしないでください。気にしなくて大丈夫です。

ZENのカミングアウト

⑴年齢 25歳

⑵ご職業 介護職

若林(以下、W):初めてカムをしたのはいつ、誰にしましたか?

ZEN(以下、Z):19歳頃、友だちにしました。

W:その時の事、心境を教えてください

Z:あまり覚えてませんが、緊張はしてたと思います

W:家族にはカムしていますか?

Z:母と兄のみ(父にはまだ)

W:している場合、カムした時の事、ご家族の反応を教えてください

Z:母は、家裁からの封筒で改名がばれて、その流れで。受け入れられていない様子でした。兄は、改名前にLINEでカム。「笑える話にしてな。」と一応納得していたようでした。

W:していない場合、よければ理由を教えてください

Z:父はLGBTに対して理解を示している様子がないため、怖いです。戸籍変更も全て済ませてからカム予定ではいます…

W:カムする前、した後では、何か変化はありましたか?(ご自身でも、ご家族でも)

Z:楽になりました。

W:友人へはカムしていますか?

Z:はい

W:友人へのカムで、嬉しかったこと、悲しかったことをそれぞれ教えてください

Z:嬉しかったことは、改名後の名前で呼んでくれることです。悲しかったことは、電車等他人がいる場面で、FTMとわかるような発言をされることです。

W:友人とはカム前、後で何か変化はありましたか?

Z:カムしたから離れていった、ということはないですね。

W:仕事場では、カムしていますか?

Z:はい、会社からの指示もあったので。

W:している場合、周りの反響、働きやすさはどうですか?

Z:最初は説明だったり面倒くさかったですが、同期の男性と同様に扱ってもらってます。

W:カムしてよかったこと、もしくは困ったことはありますか?

Z:良かったことは、健康診断などで配慮してもらえることですね。困ったことは、説明が面倒くさいことくらいですかね。

W:アウティングについてどう思いますか?

Z:これが今一番嫌です。私は普通に生きたいので。好奇の目で見られることも配慮されることも面倒くさい。

W:友人にFTMだとカムされたとき、どうすればいいですか?

Z:望む名前で呼んであげてほしいですね。

W:ご自身がFTMとして生きていてどうですか?

Z:生物学上も男性ならもっとモテただろうな、と思います(笑)あと、FTMだからこその出会いには心から感謝です。

W:ストレート、アライの方に向けて、メッセージがあればお願いします。

Z:LGBTと分類される人も中身は普通の人です。アライの皆様のおかげで日本でも理解が広まり、深まってるのは感じます。近未来には何もかもが当たり前の世の中になってると思います。

Ⅳ「FTM」として生きる

いかがでしたでしょうか、「FTM」として生きる〜カミングアウト編〜。

一口にFTMといっても、一人一人全然違いますし、その人にしかない考えが生き方があります。今日読んでいただいた中から、少しでも何か感じ取っていただけていたら幸いです。

友達が、親友が、娘が、お姉ちゃんが、妹が、もし「自分は男だ」と言い出したら…

きっと驚くでしょう。訳が分からないでしょう。

その子を責めることも、自分を責めてしまうこともあるでしょう。

受け入れるには時間がかかるかもしれません。

ただ、僕が今、FTMとして生きていて言える事は、ホルモン注射を打ち、性別適合手術を受けることにより生じるリスクよりも、今生きているこの瞬間を、ありのままで生きることを選びたい。

自分を隠して女性として生きるよりも、たとえ困難な道のりだったとしても、FTMとして生きている方が、何百倍も、幸せだということです。

想像してみてください。

大切な人に“FTM”だとカミングアウトされた時、

あなたは何と答えますか?

 

若林佑麻のプロフィール写真若林佑麻

「『FTM』として生きる」と題して、身体的には女性で男性の心を持つ「FTM」について、見えないFTMの恋愛事情や仕事事情、カミングアウト等の記事を書いています。当事者であり、おなべタレントとして活動する自身の経験や、当事者の取材を通して、FTMとして生きるとはどういうことなのか、少しでも多くの人に知っていただけるよう、誰かの少しの力になれることを願って記事を書いております。よろしくお願い致します。