こんにちは!L野X子と申します。
カミングアウトと聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
ボジティブな印象でしょうか?
いいえ、ほとんどの方がその言葉の持つ前向きさとは裏腹にネガティブな印象を持っていると思われます。
それはなぜなのか?
それは、当事者によるカミングアウトの際の失敗談が苦々しく語られ、受け取る側にもその後にわだかまりがあることが多いからだと思います。
かと言って、成功談ばかりでは、失敗から学んでいくことが出来ません。
実は、自分はカミングアウトのどちらかと言うと成功者です。
ただ、それは親に対してのみの話です。
今回はそのお話と、この先自らに待っているであろう社会的なカミングアウトの話をしていきたいと思います。
目次
街中でのXジェンダーあるある
あの人、男?女?どっち?
まずは、性自認の困ったあるある話をしたいと思います。
念のために先に説明しておきますが、自分は戸籍が女の、性自認がXジェンダー(無理やり当てはめますとFtX)な者です。
似たような性自認をお持ちの方は「あるあるー!」とうなずかれるのではないでしょうか。
ある日の出来事です。
「あなた、男?女?どっち?」
これを見知らぬ人に言われます。れっきとしたセクハラですね。
でも、街中で頻繁に、この数十年の間に、それも老若男女問わず言われてきました。
「あなたって、男の子みたい」
これもセクハラですね。知っている人に言われたとしても普通に失礼なことです。誉められていない言葉なのは明白です。
この手のやり取り、または一方的な噂は、性別に関することですから、ちょっと考えてみれば思っていても言わない類いのものだと思います。
そもそも、仲の良い人はこう言う言い方はしてきません。
その件について突っ込んで話したければ、私ならもう少し考えてからものを申します。
だからこそ言います。まるで天気の話のように、面と向かって噂される自分のような者の身になって、少しだけ想像してみませんか?それを相手がどんな気持ちで聞いているのかを。
Xジェンダーのトイレ問題
トイレに入る時はやはり、一瞬緊張します。今回も驚かれないかどうか、気を揉みます。
実際にこんなことがありました。
いつも通り、通院先の病院の女子トイレに入ろうとしていました。そしたら、中から出て来た人がこう言うのです。
「あなた、男の子!?」
凄い表情と剣幕でした。
決め付けて騒がれたこちらとしては面白くないので、そこに二人しか居なかったのもあり、当然ですが知らない人でもあったので自分は無視してトイレに入りました。
そこで、後で主治医に訊きました。
こう言うことがあったけど、何か気を付けた方が良いんですかね?と。
主治医は笑って言いました。「気にしないで良いんじゃないですか」
確かに…!自分も人に言われたから一時気になっただけで、普段はそんなに気にしてはいませんでしたね。
Xジェンダーはマイノリティの中のマイノリティ
性自認が男なら男子トイレ、性自認が女なら女子トイレに入れば良い、そんな簡単な話ではないのです。
自分はXジェンダーです。戸籍が女だから女子トイレに入っているだけのFtXで、本当は「真ん中」か「誰でもどうぞ」なトイレに入りたいのです。
Xジェンダーとは、トランスジェンダーの中のFtMの方々よりも、より珍しく、困ることも多い性自認なのです。
ついでに語るなら、自分の性的指向は「ダナーズ」と呼ばれるもので、俗に言うボーイッシュな人がボーイッシュな人を好むと言う関係性のことを言います。
自分は女の中でも多少男っぽい人を好むのです。これも、レズビアンの中では珍しい方の性的指向となるようです。
自分の性自認や性的指向共にLGBTQの中であっても、マイノリティの中のマイノリティと言えるわけです。
大変残念なのですが、数にするとこんなに狭い世界の中でも多数派の立場は強く、自分のような者はからかわれる立場に陥ることもあるくらいなのですよ。
カミングアウト
親へのカミングアウト成功例
自分は持病があって、30代に入ってから一人暮らしを諦めたので、しばらくの間は家族と同居ということになりました。
そこで、持病を治すためにも他の件で無理をしないことが大事でした。
だからこそ具合の優れない心と頭で、ある日の一晩中考えたのです。
「もう、話してしまおう!そして、ジェンダー外来に行こう!」
そう決意してからが早かったです。
その日のうちに、両親に自分の性自認や性的指向のことを単刀直入に話しました。
そして、次の日の朝にはジェンダー外来に予約を入れました。
もちろん両親も同行することを前提に、です。両親は本当に快く承諾してくれました。
悩むのが苦手な自分にとっては、ここからが長かったですね。
ジェンダー外来はとても込み合っていて、1ヶ月先まですっきりしない気持ちを抱えたまま過ごさなければならなかったのです。
心許せる仲間にもまだ会えていませんでしたし、少数派ゆえに愚痴をこぼす相手もいないと言う環境です。
正直、カミングアウトそのものよりも、この何も出来ない、やりきれない待ち時間が辛かったのです。
それでも、一悶着もなく両親に受け入れてもらえたのは、カミングアウトの成功例と言えます。
母から兄弟へまさかのアウティング
青天のへきれきどころか、すんなり受け入れてくれた両親ですが、1つだけ難点がありました。
それは、あまりに緊張感がないために起きるアウティングです。
アウティングとは、本人の了承を得ずに(大抵は本人にとって秘密であることを)第三者に話すことを言います。
うちの場合は母から、何も知らない弟へ勝手に説明されてしまったのでした。
幸いにも、弟からの拒絶はなく、「よくわからない」と言う感想で終わったそうなので良かったですが…。
これが、理解とは程遠い立場の兄弟だって存在するわけです。
カミングアウトの際は、内緒話であることを強調して、アウティング禁止令を忘れずにしなければ!そう学習しましたね。
自分の場合は、結果オーライだから良かったものの、もう時すでに遅し、なので、色々と知らなかった皆さんは、今後から是非とも気を付けていただきたいと思います。
友達へのカミングアウトいろいろ
笑えるほどにアウティングが起きるのが、この、友達へのカミングアウトです。
文字通り、自分なら笑って許しますが、人によっては笑えない場合もあるかと…。
弟発信の母経由での話ですが、弟の幼なじみが、実はゲイなのだと同窓会でカミングアウトしたそうです。
その話を伝え聞いただけの自分にも、ニックネームなどの名前を知るだけで「ああ、あの人か」と、知ってしまうことになるわけです。
自分は、これ以上広まらない様に胸のうちに留めますが、ストレートの方の感覚では「みんなの前で言ったのだから、誰にでも言って良いはずだ」と変換されるのでしょう。
ですが、ちょっと待ってください!その考えは「危ない」です。
特に身内に話す時は警戒してください。
親とは、子どもに親身な様でいて、無責任な存在でもあるのです。
友達の秘密は友達の輪の内で、と、子どもの頃の誓いのような気持ちを思い出してみると良いかもしれません。
もしアウティングしてしまった場合は、本人に真摯に謝るか、もう二度と人として信用されないだろうと肝に命じるしかないと思います。
あなたは、友達の秘密を人に話すことをどう思いますか?
これは何も、LGBTQの問題に限ったことではないのではないでしょうか?
社会的なカミングアウトのこれから
自分はカミングアウトのうちで一番怖いのが、社会的な立場のある職場でのカミングアウトだと思っています。
それは何故か?
もし、何らかの形で知られた場合には、少数派の自分としては「飯の種」を弱味に握られることになるからです。
特に社会人になってからは死活問題なのですよ。
この件では、以前にLGBTQの研究をされている方のアンケートにも、同様の回答をしたことがあります。
その時と変わらず、依然として自分の中で意見が変わることがありません。
とても怖いのは、友達から外側の自分と関係無いようで社会的な繋がりのある方々の噂話なのです。
自分を良く思わない人の耳に入らないかどうか、理解の無い人の琴線に触れないかどうかが心配なのです。
自分は自分だ、と、出来れば胸を張って生きたいです。
それには、自分のようなカミングアウトして生きる少数派を、不利な状況に追い込んだりすることがない社会になれば、と願って止みません。
私が本名で書かないいくつかの理由
LGBTQを気持ち悪いと思うのは仕方がない
こればかりは直球で言いますが、気持ち悪いのはお互い様です。
自分もストレートの方々の性自認や性的指向が理解できず、不快に思うことがあります。
ですが、生理的に気持ちが悪いものは仕方がないと思います。別に、感覚的には、気持ち悪いと思っても良いのだと思います。
ただ、それを元に、理解できない相手を攻撃しなければ良いのだと思います。
自分自身の中にある気持ちの悪さを、心の中で認めては良いけれど、攻撃する理由として正当化するのは、自分はどうかと思いますね。
そして、この善悪の物差しすら、人それぞれなのです。
だから、この件がずっと気になっていた方は、どうぞご自分の胸に手を当てて考えてみてください。思っても、良いのです。
少しだけ気分が軽くなり、そんな自分や他者を許せるのではないでしょうか?
私の周りにいるクローゼットなLGBTQの友達の存在
自分自身は、身内や一部の仕事仲間・インターネット上でカミングアウトしている状態ではありますが、当たり前ですが、友達には友達の事情があります。
大抵の方はクローゼットと言って、仲間以外には自身の性自認や性的指向を語ることなく、むしろ隠したままで生活しています。友達にすら言わずに、です。
だから、あなたの隣で一緒に笑っている友達が、LGBTQではない確証はどこにもありません。
本当は、黙っているだけで、一人の時には泣いているかもしれないのです。
そして、自分が本名でこの記事を書かない最大の理由は、ここにあります。
カミングアウトしている自分ですから、何も心配していないのかと思われると思いますが、それは違います。
自分の友達をやっているからには、共に行動することの多い立場から見れば、いつ芋づる式にバレてしまうか冷や汗ものではないか、と胸中を推し量っていまして…。
これも結構な気を使うわけです。
そう言ったデリケートな関係性をカモフラージュするためのおかしなペンネーム、L野X子でもあるのです。
カミングアウトをしている私自身も半分はクローゼット
身内やほうぼうへのカミングアウトをしてある自分ですが、親戚までには直に伝えていない立場でもあります。
友達のクローゼットな事情のついでに、自分の遠くて近い人間関係の方々には一応は秘密と言うことにしています。
もちろん、インターネット上を本名で検索されてしまえば、誰にでもバレることではありますが、そこまでする方には好かれているか嫌われているかのどちらかでしょう。
昔の知人は、本名だけは知っているでしょうし、そんな昔のことまで心配していては身が持ちません。
それに、そんなに気になるのに直接聞いてこない方は、自分の人生には関係ありませんし、聞いてくればカミングアウトのチャンスだと捉えて積極的に対応するまでです。
自分の性格なので仕方ないですが、かなり強気な方の半クローゼットと言うことになりますね。あまり、こう言う人はいない様なので、どうか誤解なきよう…!
どちらかと言うと自由奔放な試練の少ないカミングアウト例を紹介しましたが、他のLGBTQの皆さんの事情は、もっともっともっとデリケートです。
少なくとも、自分はそう思います。
カミングアウト~本名で書かない理由~のまとめ
自分なりのカミングアウト体験談でした。
どうでしたか?想像通りだったでしょうか?
それとも意外でしたか?
カミングアウトする側も、竹を割ったようには上手く行かないことは百も承知なのです。
それでもお互いに折り合いを付けて、なるべく無理なく生きて行けたらと日々願っているのです。
そして、さらに仲良くなれることがあるならば幸運です。
最後まで読んで下さって、ありがとうございました。